事例

無医地区での遠隔診療の取り組みで見えてきた、有用性と課題

2018/10/31
by 甲斐洋一朗

日南市 健康増進課 地域医療対策室 室長補佐

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無医地区での遠隔診療の取り組みで見えてきた、有用性と課題

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日南市の地域医療の現状と課題

日南市は宮崎県南部宮崎市の南隣に位置し(図1)、年間平均気温19°Cと温暖な気候に恵まれ、国定公園である日 南海岸などの観光地を抱えるほか、広島カープや西武ライオンズのキャンプ地として、またサーフィンなどのマリンスポーツのメッカとして知られている。市域面積は536.1km2で人口5万4,090人(平成27年10月国勢調査)と高齢化率35%を超える地方の町である。

日南市の位置

図1

医療機関の状況は、病院10施設、診療所48施設、歯科診療所24施設があり、中核病院として急性期を担う336床の宮崎県立日南病院と回復期や在宅医療などの地域医療を担う日南市立中部病院がある。主要疾患死亡率(人口10万対)は、悪性新生物が418.2、心疾患 326.2、脳血管疾患 167.6と、いずれも全国平均と比べ高い状況にある。

地域医療を取り巻く課題としては、医師の不足と診療科による偏在がある。大学病院の医局員の減少に伴う中核急性期病院の派遣医師の確保や、産科・小児科といった特定の診療科医師の不足が顕著となっている。また、開業医師の高齢化、後継者不足も大きな課題である。

取り組みの経過・背景

日南市では、地域資源と企業のもつリソースを融合させることにより、地域の抱える課題の解決を図るとともに、新たな価値を生み出すことを目的として業務提携や企業誘致を積極的に行っており、「日本で一番組みやすい自治体」を自負している。新たに誘致したITベンチャーのポート株式会社が2015年11月よりICTで患者と医師をつなぐ遠隔診療プラットホームサービス「ポートメディカル」の提供を行っており、都市部でのモデル事業を展開していた。

そこで地域モデルの実証を呼びかけ、市立病院で担っていた無医地区巡回診療の機会を実証フィールドとして提供するかたちで、2016年6月に「遠隔診療実証に関する協定」を締結し実証実験をスタートした。市にとっての、前述の医師不足とも関連するが、高齢化に伴い増えると予測される無医地区などの医療機関から離れた 地域の診療体制を補完する有効なツールの1つとなりうるのではとの期待と、ポート社にとっての、自治体と組むことによる信頼性とインパクト、さらには地方部での普及性の検証ができるといった、双方の捉えるメリットが合致したことが背景にある。

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著者

甲斐洋一朗 氏

日南市 健康増進課 地域医療対策室 室長補佐

平成7年に日南市役所入庁、土木技師として都市建設課〜土木港湾課〜建設課で道路・公園等の建設事業を担当。平成25年10月の地域医療対策室新設とともに現職。医療経営士3級。 市立病院の経営改善事業や初期夜間急病センターの運営、市民への啓発事業など地域医療に関するさまざま な取り組みを行うほか、変わった取り組みとして、医療ケア児にかかわる職種の情報交換の場として「こどもケアカフェ」を 開催。 詳しくはFacebookページ『日南市役所地域医療対策室』を参照。


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