無医地区での遠隔診療の取り組みで見えてきた、有用性と課題

2018/10/31
by 甲斐洋一朗

日南市 健康増進課 地域医療対策室 室長補佐

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取り組みの状況

実証を行っている地区は、市中心部から約20kmほどの中山間地で、46世帯84 人、高齢率は50%に近い。無医地区巡回診療を実施している市立病院からは30km離れており、最も近い診療所からも15kmで、バスは通っているが本数が少なくバス停からも遠いため、特に高齢者は急病の場合はもちろん慢性疾患の場合も、家族が仕事を休んで送迎をしたり、高額を払ってタクシーを利用したりしなければならない環境にある。

今回実証を行った地区

今回実証を行った地区

今回実施している遠隔診療の実証は、対象地区の公民館で実施している巡回診療の機会を利用して行っている。基本的なシステムは、病院の診察室にいる医師と公民館にいる患者さんがタブレット端末を用いて診療を行うものであるが、看護師と事務職員が必ず現地に赴き診療に立会ういわゆるD to N to P(医師-看護師-患者)方式で運用している。

具体的には、現地で付き添う看護師があらかじめ血圧測定や検温などを行い医師の診療を助けるとともに、医師が遠隔でテレビ電話にて問診を行う際には事務職員が機器の操作を行う。対象は高血圧などの慢性疾患の患者さんであるが、適宜(4ヶ月に1回実績)対面診療を組み合わせている。初診は巡回診療での対面診療もしくは病院外来での診療を原則としており、また増悪等が確認された場合には、いつでも医師が出向くこととしている。診察を受けた患者さんへのインタビューからは、「はじめは不安であったが、対面での診療と遜色ない、看護師さんもいてくれるので安心」といった声が聞かれた。

公民館での遠隔診療の風景

公民館での遠隔診療の風景

そのほか、ポート株式会社の園生智弘医師が中心となり市立病院の内科外来患者を対象にアンケートを実施し、その結果を「地域医療現場における遠隔診療の潜在的ニーズの検証」として論文にまとめ日本遠隔医療学会誌において発表している。また、遠隔医療学会の理事を招いて地元医師会の医師向けの研修会を実施し医療従事者への理解促進を図ることなども行っている。

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著者

甲斐洋一朗 氏

日南市 健康増進課 地域医療対策室 室長補佐

平成7年に日南市役所入庁、土木技師として都市建設課〜土木港湾課〜建設課で道路・公園等の建設事業を担当。平成25年10月の地域医療対策室新設とともに現職。医療経営士3級。 市立病院の経営改善事業や初期夜間急病センターの運営、市民への啓発事業など地域医療に関するさまざま な取り組みを行うほか、変わった取り組みとして、医療ケア児にかかわる職種の情報交換の場として「こどもケアカフェ」を 開催。 詳しくはFacebookページ『日南市役所地域医療対策室』を参照。


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