第3回 オペレーションを改善することで業務のスリム化を図る

2021/02/04
by 将志藤井

特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長

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「PDCAを回す」ことはすでに取り組まれている医療機関も多いことだろう。しかしながら、このPDCAを回し続けることは結構難しい。なぜ、PDCAを回すことは難しいのか? PDCAの対象にした業務の「そもそも」を見直すことも重要かもしれない。

文・藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

 

オペレーションの基本はPDCA

今回は経営学やMBAでは「オペレーション」といった分野で取り上げられる内容についてみていく。
オペレーションは前回のマーケティングと違って、一般的な経営の領域で使われているツールを医療機関でもおおよそ用いることができる。オペレーションとは、いろいろな業務の流れをより効率的、かつ成果(アウトカム)が高まるように見直していくことである。

例えば、患者さんが来院してから検査をして、診察を受け、会計をして終了になる、といったプロセスや、職員の来月の勤務予定を組み、日々出退勤を管理し、勤務予定と違う場合は勤務変更を行い、最終的に実績の予定表を完了させる、といったプロセスを、どう改善していくかということである。
改善を行うにあたり最も一般的でかつ普遍的に使える考え方は「PDCAサイクル」といわれるものである(図1)。

あるべき姿は、日々の業務の過程で改善が行われ、プロセスがどんどん効率化されていくという形であろう。しかし、頭ではわかっているが、日々忙しくてなかなか改善できないのが多くの人の置かれている状況ではないだろうか。

医療界に広まったオペレーションツールの事例オペレーションに関する考え方やツールは非常にたくさんあり、医療機関で普及が進んでいる事例の1つはクリニカルパスだろう。ご存知の通り、患者さんの治療プロセスを可視化し、患者さんに治療予定を説明できるうえ、かかわるスタッフが次に何をすればよいかが明確になるツールである。
クリニカルパスが日本の医療界に広がった90年代後半には、医療は患者さんによって提供する内容が違うので、工業製品のようにプロセスを固定することはできない。医師の出身大学によって治療方法や術式が全く異なり、主治医や医療チームごとにパスが異なる、といったような状況もあった。今では治療プロセスもだいぶ統一化されており、クリニカルパスという概念そのものに拒否反応を示すような医療者は少なくなってきたのではないだろうか。

こうした変化の背景には、各学会で標準治療のガイドラインを整備してきたり、DPCの対象医療機関が増え、治療プロセスが可視化できるようになってきたことも影響しているだろう。

 

この記事の掲載号

『Medical Communication』2018年夏号

図2はDPCが導入された当初の大学病院おける白内障の在院日数別患者数と、平成28年度の状況を比較したものである。


DPCが導入された当初は医療機関によって在院日数に大きな差があったが、今では多くの患者で5日以内に退院するようになっている。こうした傾向は白内障に限らず、他の疾患でも明らかになっている。患者さんの状況はそれぞれ個別で違うことは、今も変わらない事実であろう。しかし、そうした状況の違いも考慮したとしても、根本となる治療プロセスはやはりどの患者さんにも共通するのではないかということである。

クリニカルパスの元になった考え方は、工業製品の生産工程をパスという形で可視化することで、プロセスを改善していく手法である。
パスのようにオペレーションで扱われるツールには、モノを作る業界から生まれた方法論もたくさんある。そうした手法を医療に取り入れる際にそのまま導入してしまうと、対人サービスなのでうまくいかないこともあるだろう。だからといって工業発の考え方を頭から否定するのではなく、どう応用すると医療分野でも活用できるのか検討の余地はある。
もうひとつ、医療業界にオペレーションの改善といった視点で根付いている領域に、医療安全分野が挙げられる。この領域ではさまざまな手法が開発されており、医療機関によって、もしくは時代によって、使われているツールが異なるようである。SHELモデルやIm-SAFERといった医療安全の要因分析方法などが挙げられる。こうしたツールも医療安全対策をしていくうえで参考になることは間違いない。
しかし、こうしたツールを導入すればリスクの高いヒヤリハット件数が激減するという魔法の杖ではない。どんな分野の方法論もそうであるが、日々のプロセスでツールを活用し、絶え間なく見直しを行っていくことで初めて、アウトカムとなって現れてくる。
医療安全においても基本になっているのはPDCAサイクルである。そのサイクルをどのように回しているのかというと、医療安全委員会など多職種が集まる会議で改善策を検討し、現場にフィードバックし、改善策を実行していく、というのが一般的な医療機関の流れではないだろうか。
こうした各病院の情報活用を国全体でも後押ししており、日本医療機能評価機構が医療機関で起こっている似たような医療安全の問題について情報を集め、対応策まで落とし込み、注意喚起する事業もある(図3)。


医療安全の委員会に限らず、医療機関に求められる多数の会議は、本来こうした改善プロセスの一環に位置づけられているものである。関係者が集まり、知恵を出し合い、解決策を導き、それを実行してフィードバックしていくことが委員会の役割である。しかし、なかなか改善活動に結びつくような会議になっていないところも多いのが実情ではないだろうか。そうした会議自体も“改善すること”が求められている。

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著者

将志藤井 氏

特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長

2006年に早稲田大学政治経済学部を卒業。病院向け経営コンサルティング会社である(株)アイテック、(株)MMオフィスを経て、2012年度から沖縄県立中部病院・経営アドバイザーとして(NPO法人病院経営支援機構所属)病院経営支援を行い、診療報酬を駆使した収益増、医療機器等の費用削減、業務効率化に携わる。2015年度から特定医療法人谷田会・谷田病院(熊本県甲佐町)の事務部長に着任、2017年度から熊本保健科学大学の非常勤講師(看護管理)も務める。大東文化大学の非常勤講師(病院経営)も歴任、内閣府主催の国際交流事業や米国国務省主催のIVLPプログラムにも招聘される。2013年に執筆した論文「日本医療再生の具体的提言」は神奈川県保険医協会から表彰される。


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