第4回 医療機関における人的資源管理について考える

2021/02/11
by 将志藤井

特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長

はてなブックマーク

 

BSCはどのように運用すべきか?

続いて、人的資源管理の領域についても代表的な事例をみていく。

1)BSCによる管理

日本の医療機関で最も浸透している管理制度としては、BSC(バランス・スコア・カード)ではないだろうか。BSCとはビジョンと戦略を明確にすることで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質から経営を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うためのマネジメント手法である。

財務の視点に加えて、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの視点から戦略を立て、その戦略を現場の業務にまで反映させることで、職員は日々の業務がどのように目標達成に影響するのかを意識でき、経営陣は視覚的、実質的に目標達成までの道のりを管理することができるとされている(図2)。

BSCを導入している医療機関のおおよその流れとしては、(1)年度の区切りに病院の経営方針が示され、(2)それに応じて各部門が4つの視点で目標を設定する。(3)それをもとに経営幹部と面談をし、(4)各部門の目標を積み重ねて病院全体の目標とする。(5)向こう1年を通してその目標達成を目指し各部署が行動していく、といった感じであろう。

BSCというかたちをとっていなくても、目標管理制度などで同じような運用をしているところもあるだろう。

2)BSC管理の課題

課題として挙げられるのは、BSCの目標があまりにも細分化され、制度を運用するために何度も検討を重ねないとならない状況(つまり、会議がたくさん開かれる)に陥ってしまいがちな点である。

その結果、年度初めにはBSCのことを考えるが、日々の活動ではそれらの目標が忘れ去られ、年度末や面談の際にだけ思い出すといった組織も少なくない。また、ダイナミックに動いている組織においては1年前に立てた目標が形骸化することもあるだろう。

そうしたことも含め、どのような制度で目標管理を行っていくのか、もしくは目標管理を行わないほうがよいのかも含めて考える必要がある。

 

給与制度をどう設計するか?

人的資源管理の視点からすると、BSCなどで設定した目標管理の結果を人事考課と連動させるかどうか、ということも考えるべきテーマとなる。個人の目標や行動を給与として反映すべきなのかどうか、ということである。これも絶対に正しい答えがあるわけではない。

1)組織としての“あり方”と給与制度

頑張っている人にそれなりに報われる給与を支払うべきだという考え方もわかる。例えば、手術を1件実施すると○○円、救急患者を1人受け入れると◯◯円と、手当を設けている病院もある。

こうした手当があればモチベーションが上がり手術件数や救急の受入件数がアップするのであろうか。一方で、創造性がある仕事においてはインセンティブが設けられることが必ずしもモチベーションアップにつながるわけではない、という調査結果もある。このように、目標管理の結果を給与と連動すべきなのかどうか、ということは必ずしも正解がわかっていない。

また給与と連動させることにより、さらに管理のしくみが複雑化し、目標設定やその評価にあまりにも労力が使われ、管理職の多くの時間が失われるという状況になってしまう組織もある。もしくは、精緻なしくみで目標管理やさまざまな項目を給与と連動させたが、結果的に支給された給与をみると、ほぼ年功序列になったというような事例もある。

給与は職員からすると非常に興味関心が高く、また不平不満も出やすい分野である。どのような給与体系にしていくのか組織のあり方も含めて構築が求められる。

  1. 1
  2. 2
  3. 3

著者

将志藤井 氏

特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長

2006年に早稲田大学政治経済学部を卒業。病院向け経営コンサルティング会社である(株)アイテック、(株)MMオフィスを経て、2012年度から沖縄県立中部病院・経営アドバイザーとして(NPO法人病院経営支援機構所属)病院経営支援を行い、診療報酬を駆使した収益増、医療機器等の費用削減、業務効率化に携わる。2015年度から特定医療法人谷田会・谷田病院(熊本県甲佐町)の事務部長に着任、2017年度から熊本保健科学大学の非常勤講師(看護管理)も務める。大東文化大学の非常勤講師(病院経営)も歴任、内閣府主催の国際交流事業や米国国務省主催のIVLPプログラムにも招聘される。2013年に執筆した論文「日本医療再生の具体的提言」は神奈川県保険医協会から表彰される。


^