没個性・無個性キャラを演じ続ける若者


エネルギーの矛先が唯一コミュニケーションに向けられている若者たち・・・「さとり世代」の実像
一旦出会うと、すぐに連絡先を交換してつながり、その関係を永遠に続ける。一度合コンした相手の近況を一生知り続けないといけない。昔の日本の村社会をもっと大きくしたような「ソーシャルメディア村社会」に生きている。 今の若者は、ソーシャルメディア空間から、もはや抜け出られません。
独自の洞察力でネット時代の日本を読み取り、「さとり世代」「マイルドヤンキー」「ソーシャルメディア村社会」など数々の流行語を生み出し、社会に浸透させてきたのが、博報堂ブランドデザイン若者研究所のリーダー、原田 曜平氏である。原田氏がリーダーを務める若者研究所には博報堂の社員の他に、現役の高校生から若手社会人まで一般の若者たちが所属し、彼らと共に若者について研究している。その研究から得られた知見を基に、とかく消費しないといわれる若者をターゲットにした商品開発にも、さまざまなメーカーと取り組んでいる。
若者たちと直に接し、若者向けのモノづくりをする原田曜平氏にネット社会を生きる現代の若者たちの人間関係、コミュニケーションについて分析していただいた。
今の若者「さとり世代」の特徴
2013年に私が書いた「さとり世代」という本が流行語大賞にノミネートされました。大雑把に10代後半から20代後半くらいの人たちというイメージで捉えていただきたいのですが、その若者たちを「さとり世代」とネーミングしました。
日本のかつての若者たちは必ずどこかでエネルギーを発揮していました。団塊世代であれば、すごく政治意識が高く、政治にベクトルが向いていました。新人類・バブル世代であれば、消費に。団塊ジュニアぐらいからは就職氷河期になり、派遣社員や非正規雇用が増え、矛先が労働に。労働環境に憤る気持ちを強く持っていました。
しかし「さとり世代」に至っては、ベクトルの向かう先がほとんどなくなった、何に対してもエネルギーが向かない。若者であるということはどこかにエネルギーの向かう先、はけ口があるはずなのに、なくってしまった。若いのに悟ったような言動をとる人たちということで、「さとり世代」とネーミングしたのです。消費にも恋愛にも、車にもお酒にも関心が薄れ、あらゆる物にベクトルがなくなってきているのが「さとり世代」の特徴です。
さとり世代の人間関係
若者たちのエネルギーの矛先がなくなっている中で、唯一ベクトルの向かう先がコミュニケーションです。車に乗らない、恋愛しない代わりに友だちと無料通信アプリLINEでやりとりし、ツイッターに書き込みして、一日の多くの時間と労力がコミュニケーションに割かれています。
昔に比べ、コミュニケーションの質が薄くなっているとは思いません。しかし量は明らかに増えています。上の世代がLINEばかりしている若者を 「今の若い子は表層的な友だちの数は増えているけれども、人間関係やコミュニケ―ションは希薄になっている」と言いがちですが、若者の実態を見ると、小・中学校時代の友だちと大学生や社会人になってもやり取りしているわけです。ソーシャルメディアは一度つながると途切れませんから。昔の方が質が濃かったとはいえず、今の方が継続性が強く、情報量も多いというのは間違いありません。
ただ、一人の人間が他人に割ける時間は限られており、付き合わなければならない人が増えている以上、個々のコミュニケーションは薄くなります。親友不在、お友だちが異常に増加という状況です。しかし友だちなので、小学校時代に誰がおもらしをしたとか、どこのお母さんが何をしたとかを全部覚えている関係が続くわけです。決して浅いとはいえません。今の子たちは、離れていても情報が入るわけですし、どんな境遇になろうが、ずっとつながり合っているわけで、昔とは比べ物にならないくらい関係は濃いし、コミュニケーション量は多いのです。
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