没個性・無個性キャラを演じ続ける若者

2016/09/29
by 原田曜平

博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー

はてなブックマーク

さとり世代

ちがう世代とのコミュニケーション

今の若者たちの継続した人間関係は同世代に限られています。「竹馬の友」とずっとつながっている状態です。しかし、若者が社会人になり、おじさんたちがLINEを通じてコミュニケーションをしたいからとアプローチしてもしてきません。

問題は、すごく広い人間関係になっているのに、それが同世代間に限られているということです。一部の若い子たちの地元志向がすごく高くなっていますが、退職した団塊世代が若者コミュニティーに入り、「若者に何かを教えてあげたい、一緒に町おこしをしたい」と言っても、おそらく受け入れられないと思います。コミュニケーションが世代間で適用されにくいということは大きな問題かもしれない。悪い言い方をすれば、小・中学生のような状況でいる、あくまでも「お友だちネットワーク」かもしません。

両親とのコミュニケーション

20歳くらいの大学生の母親が45歳から40代後半の「バブル世代」です。母親に限らず、昔の40代後半・50代前半と比べると、明らかに若々しい感性を持っています。例えば、「サザエさん」の波平さんは52歳です。今のバブル世代に波平さんがいるかというと、ほぼいない。父親・母親が若々しくなり、若者の気持ちをとても分かるようになっています。親の世代の変化によって親子の仲、風通しは良くなりました。

それからケータイですね。嘘もつけますが、昔より親と子がつながり、コミュニケーション量は増えています。昔なら、子供が家に帰ってこなくて親が心配して喧嘩するのがよく見られましたが、今はありえません。連絡を取れるわけですから、親も安心するわけです。ミステリアスな部分がなくなり、親子仲はよくなりますね。ツールの開発という影響もあります。

ソーシャルメディア村社会を生きるさとり世代

ソーシャルメディア村社会を生きる「さとり世代」

今の30代前半の人であれば、メールアドレスで用が済みました。20代後半であれば、ミクシィ。その次の世代であれば、ツイッター、フェイスブック。その下は、LINE、インスタグラム。ソーシャルメディア自体は変わっていますが、一旦友だちと出会い、すぐに連絡先を交換してつながり、その関係を絶縁宣言しない限り、永遠に続きます。一度合コンした相手の近況を一生知り続けないといけない時代になっています。ということは、人間関係数が異常に増えて、知り合いの知り合いも昔以上に多くなっています。非常に人間関係が広く、かつ継続性があり、口コミ、噂話が多い。それこそ、昔の日本の村社会をもっと大きくしたような「ソーシャルメディア村社会」に今の若者は生きているわけです。

「今の若者は生意気じゃなくなった、暖簾に腕押しで反抗しない」と言うおじさんが非常に多いですね。それは、さとり世代の若者たちが「ソーシャルメディア村社会」を生きているからで、下手に持論を展開したり、自分の個性を見せてしまうと、「あいつ、付き合いにくいらしいよ」と噂が出回ってしまうので、没個性・無個性のようなキャラを演じる状況になっているのです。昔だったら、合コンで女の子にひどいことを言っても、もう永遠に会わないだろうと思うこともできたし、周りの目を気にせず「好きだ」と口説けたかもしれません。しかし今は、その女の子たちから情報が自分の身近な人たちにまで回ってきてしまうリスクが出てきています。

また、住んでいる場所が村社会なので、村社会から出ない限り、そこの住人に合わせざるをえません。昔の村社会なら、「オラ、東京さ行ぐだ」と東京に行ってしまえば、抜け出すことができましたが、ソーシャルメディアには空間がないので、どこに行っても出られません。例えば、陰湿ないじめを受けて、親が子供を隣の学校に転校させても、隣の情報や噂はつながります。さすがに北海道から沖縄に行けば大丈夫かもしれませんが、それでも回ってくるリスクはあり、それくらい非常に巨大な村社会ができてしまっているということなのです。

  1. 1
  2. 2

著者

原田曜平 氏

博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー

1977年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て現職。専門は日本及び 中国やアジアの若者研究とマーケティング、商品開発。主な著書に『近頃の若者はなぜダメなのか?携帯世代と「新村社会」』(光文社)『さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち』(KADOKAWA)『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎)『女子力男子』(宝島社)など。


^