迫りくるリスク! 温暖化の影響と将来予測


温暖化が進むと、地球の気温や海面水位はどこまで上がるのか。最新の研究によって、地球温暖化が私たち人間の社会や自然の生態系にさまざまな影響を及ぼし始めていることが分かってきている。適切な対策を講じなければ、数十年~100年後には私たちの暮らしが危機的な状況にさらされる可能性もある。温暖化によって地球の未来はどうなるのか、予測情報を正しく理解することが大変重要になってきた。IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change報告書を基に解説する。(1988 年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画( UNEP)により設立された政府間機関。2013年から2014年にかけて最新の第5次評価報告書(AR5)を公表した)
二酸化炭素の国別排出量
二酸化炭素(CO2)の国別排出量(2012年)をみると、中国が全世界(317億トン)の4分の1以上を占めて1位となっている。次いでアメリカが2位、日本は5位。一方、国別の1人当たり排出量では、豊富な石油・天然ガスを産出するカタールが群を抜いて1位で、同じく中東の産油国であるアラブ首長国連邦(2位)、サウジアラビア(4位)が上位を占め、最大の排出国である中国は日本より低くなっている。
世界のエネルギー起源CO2排出量(2012年)
出展:パンフレット「STOP THE 温暖化 2015」環境省より
国別1人当たりエネルギー起源CO2排出量(2012年)
出展:パンフレット「STOP THE 温暖化 2015」環境省より
日本の排出量
2013年度の温室効果ガス総排出量(速報値)は13億9500万トン(CO2換算)で、前年度と比べて1.6%、05年度と比べて1.3%増加している。
部門別排出量では、排出量が最も大きい「産業部門」(工場など)で05年度と比べて6.3%減少しているが、オフィスなどの「業務その他部門」は19.5%増、「家庭部門」は16.3%増と大きく増加している。
CO2の部門別排出量(電気・熱配分後)の推移
出展:パンフレット「STOP THE 温暖化 2015」環境省より
上昇し続ける世界平均気温
陸域と海域を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年の期間に0.85℃上昇しました。また、最近30年の各10年間は、1850年以降のどの10年間よりも高温だった。
21世紀に入ってからの世界平均地上気温上昇率は10年当たり0.03℃とほぼ横ばいの状態を示しており、こうした温暖化の停滞状態はハイエイタスと呼ばれる。
世界中の数多くの研究者がこの現象を調査した結果、太平洋における大気と海洋の循環が、ここ十数年間は「自然のゆらぎ」の影響で特徴的な状態にあることが分かってきている。太平洋の表層が冷たく、西側の太平洋内部に暖かい海水が閉じ込められる状況が続きやすい状態にあるため、地球表面の平均気温には変化がない。このような「自然のゆらぎ」は10年規模の気候の内部変動であり、地球全体としては温暖化が停滞しているわけではない。
2014年には、世界の年平均気温偏差(1981~2010年の30年平均値を基準値とし、平均気温から基準値を差し引いた値)が+0.27℃となり、統計を開始した1891年以降、最も暑い1年になった。
上昇し続ける世界平均気温(1891 ~ 2014年)
出展:パンフレット「STOP THE 温暖化 2015」環境省より
二酸化炭素濃度は産業革命以前より40%増加
二酸化炭素(CO2)は、温暖化の要因である温室効果ガスの代表的なもので、その大気中濃度は産業革命が始まった 1750年以降、急激に増えています。私たちは石油や石炭などの化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出し、経済を成長させてきました。その結果、大気中の CO2濃度は現在、1750年に比べて 40%も増加している。
大気中の CO2濃度が増加すると、海洋に取り込まれるCO2の量も増え、海洋の酸性化を引き起こす。1980 年代後半以降、CO2濃度の上昇とともに海水のpHが低下、すなわち海洋の酸性化が進んでいるといえる。
Photograph of Widnes in the late 19th century showing the effects of industrial pollution
地球温暖化で世界が直面している異変
地球温暖化が進んでいることはもはや疑う余地がない。そして、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書によれば、私たち人間の活動が温暖化の要因である可能性が「極めて高い」ことが指摘されている。
温暖化によって私たちは、かつて経験したことのないような気候の変化に直面している。極端な高温や強い台風などの異常気象が各地で発生し、人間の生命や財産に甚大な被害をもたらしたり、生物を絶滅の危険にさらしたりしているのだ。
連載記事一覧
Vol.1 | 医療施設のエネルギー消費量削減 |
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Vol.2 | 迫りくるリスク! 温暖化の影響と将来予測 |
Vol.3 | 明日の日本経済を 真剣に考えれば 省エネへの取り組みは 中途半端で終われない |
Vol.4 | 災害拠点病院としてのBCP機能も充実 |
Vol.5 | 透析室を中心に省エネ59%大幅削減達成 |