行動変容の仕掛け方

2019/07/29
by 小山晃英

京都府立医科大学 地域保健医療疫学

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セッションの Point

  • 生活習慣病などの慢性疾患の診療では、患者さんに行動変容を促すことが必須
  • 「行動変容」を促すために、マーケティング・行動経済学の知見が活かせる
  • 行動科学の活用は、患者さんを動かすだけでなく、病院内スタッフも含めて“ファン”にまでする可能性がある

セッション2のテーマは「ブランディング」。病院としてのブランドを確立し、地域や生活者にとって特別な存在となることができれば、長く付き合いを続けられる関係を築くことができる。その第一歩は「人間行動の変容」。京都府立医科大学の小山晃英氏が、学術領域と産業領域の両面から行動変容の手法と理論について解説した。

Session 02 経営に活きるブランディング戦略

 長寿化に伴い、急性疾患より生活習慣病などの慢性疾患が増えた現在。慢性疾患には人+遺伝+生活習慣のみではなく、家庭環境+社会環境など多様な因子が影響するため、予防や治療を進めていくには、患者さんに行動を変えてもらうことが重要になる。しかし、「運動してほしい人に“運動して”と言ってもなかなか行動にまで届きません。運動不足とわかっていても、変わる気がない人を変えるのは難しい」と小山氏。

 では、どうすべきか?「企業は商品を売るために“マーケティングの手法”を駆使して人の行動を変えている。医療にマーケティングは関係ないと思われがちだが、行動変容を仕掛けるにはこの手法が活用できる」と続ける。行動変容を仕掛ける方法としては、マーケティングに代表される経済学や、行動科学分野での研究がなされている。

 「従来の経済学と異なり、行動経済学では“人間は必ずしも合理的な行動をするわけではなく、感情が動いたときに行動が変わる”と結論されています。『ポケモンGO』したさで、家に閉じこもっていた人たちが外へ出て歩くようになったことはひとつの例だ」と説明する。また、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が提唱したnudge(ナッジ)は、選択肢の設計により人を動かす手法で、現在では政策にも活用されている。海外では、臓器提供カードのチェック項目を、“提供する臓器”から“提供したくない臓器”に変えたところ、提供者が増えたという。

 「行動変容を仕掛けると、『ついつい』が起きる。マス(大衆)に働きかける行動科学の手法を活用することで、生活者や患者さんに受け入れられ、さらに病院内スタッフも含めてファンにすることもできる」とその可能性を示した。

著者

小山晃英 氏

京都府立医科大学 地域保健医療疫学


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