豪州クイーンズランド州のヘルスケアICT戦略

2016/07/15
by 上瀬剛

NTTデータ経営研究所 公共行政サービスコンサルティングユニット長、パートナー

はてなブックマーク

Blueprint for better healthcare in Queensland

位置づけ/州のヘルスケア分野での戦略について全体方針として取りまとめたのが2013年2月に発表された“Blueprint for better healthcare inQueensland”※2である。これは、同州がオーストラリアのヘルスケアの主導的立場となるために、厳しい現状認識(自己批判)を示したうえで構造的かつ文化的な見直しにまで踏み込んでいる。“Value for money, performanceand delivery”をスローガンとしていることからも、医療の質の向上と費用対効果の双方を重視している点が特色である。また文化(culture)的側面にも着目し、医療サービス提供スタッフの確保が課題となるなか、職場環境の改善(Good Workplace Culture)を同州の医療サービスの改善にも寄与するものとして重視している。

骨子/ Blueprintは、以下の4つの柱で構成され、それぞれについて現状認識(定量化可能なものはグラフ等も掲載)及び今後の重点施策が整理されている。

  • Health services focused on patients and people (患者、住民中心)
  • Empowering the community and our health workforce (コミュニティ、人材強化)
  • Providing Queenslanders with value in health services (高付加価値サービス)
  • Investing, innovating and planning for the future (将来に向けたイノベーション、投資)

成果物は一般住民向けにパンフレット形式でわかりやすくまとめられており、今後の変革が必要となる取り組みについて「The agenda for change」として、例えば官僚主義の廃止や人材不足等、従来の同州が抱えていた課題(20強)に関して厳しい現状認識とそれに対する改善の方向性を示している。具体的には、住民向けには現状をOld、今後をNewとすることで、現状を変革しようという不退転の強い意志が伝わってくる。(図1)

自ら掲げた高いハードル

こうした変革のための取り組みは、内容が一般住民にとって非常にアピールする一方、責任主体となる州政府の関係機関に対しては、大きなハードルを掲げるものとなっている。すなわち、待遇改善という財政負担が必要とされる取り組みも含まれる一方で、公立病院以外についても対住民視点で評価対象となること、数値を住民に対して情報公開することにコミットすることで、成果が出ていない場合住民にそれが明らかになってしまう。もっとも、一方で人員配置の見直しによってより前線サービス充実を図ろうとする等、具体的実現手段としてのHowについても具体的に言及することで、設定した目標の実現可能性が読み手にも伝わるものとなっている。

Telehealth

この他Blueprint上での注目点としては、遠隔医療(Telehealth)があげられる。広大な土地を有する同州では、遠隔医療の充実が大きな課題であり、取り組みも進んでいる。本資料によると、2011-2012の時点で13635件の遠隔医療サービスが行われたとのことだが、全体(対面)への比率はわずかであり(0.5%未満)、今後は施設間の標準化やシステム更新を加速させるとともに、救急医療向けに終日対応可能な地域向けのトライアルでの拠点(Trial Sites for the Rural TelehealthServi ce)を6か所設けるとしている。

  1. 1
  2. 2

著者

上瀬剛 氏

NTTデータ経営研究所 公共行政サービスコンサルティングユニット長、パートナー


^