多職種連携と多文化協働 ~多文化協働の介護現場を通じた、日本の介護の国際的競争力構築に向けて~

2019/06/10 神山 資将
by 神山資将

一般社団法人知識環境研究会 代表理事

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多職種連携と多文化協働 ~多文化協働の介護現場を通じた、日本の介護の国際的競争力構築に向けて~

日本の介護の特徴は「多様な思考スキーム(考え方の組み立て)が混在し、それが何かしらの共通基盤上で共存している」ことにある。多文化協働の流れのなかで「共通基盤」が揺らぐとき、日本の介護の真価が問われる。

多様な思考のハーモニーが効果を発揮

 筆者は介護職や看護師など、介護現場のさまざまな職種の思考スキームを研究してきた。介護現場ではスタッフの思考スキームが多様なうえ、利用者固有の思考スキームも相まって、介護のコミュニケーション空間がつくられている。ここで重要なことは、単に多様なだけではバラバラになってしまう危険性があるにもかかわらず、ひとつのハーモニーとしてケアの効果を発揮しているということである。

日本の介護はソフトアプローチ

 専門性を確立し、利用者に専門化した(規格化された)ケアを提供するというアプローチをハードアプローチとするなら、日本の介護はいわばソフトアプローチである。介護の現場では、利用者に寄り添い、多様なスタッフと理解しあいながら、調整しつつ、(個別化された)ケアを提供している。
 冒頭で「共通基盤」という表現をしたが、これこそが日本の介護のコアコンピタンス(中核的能力)である。悪化する労働環境や利用者の急激な増加など厳しい状況に直面した日本の介護が柔軟に対応できたのは、この共通基盤があったためではないだろうか。
 共通基盤とは何か。大ざっぱかつ簡単にいえば、「文化」である。「ケアの提供者も受容者も日本人である」ということから生まれる何かしらの文化の要素が、多様な思考スキームが混在していてもケアを崩壊させることなくひとつのケアとしてまとめてきた。共通基盤があるからこそ多様な思考スキームがハーモニーとして一体化しているのである。

介護における外国人技能実習制度と「多文化協働」

 2017年11月に外国人技能実習生制度の業種に介護が追加された。介護現場に外国人の介護スタッフが誕生することになる。実習生は日本語を学び、利用者にケアを提供し、日本人スタッフと協働し、そのなかで多くの日本的な介護システムを学ぶことになる。
 筆者は多職種連携と職種による思考スキームの相違(多様性)という視点から介護をみてきたが、これからは「多文化協働」が新たに重要な視点となる。日本とは異なる文化を背景としているスタッフが加わることで、思考スキームの多様性はこれまで以上に増加する。多文化協働は、共通基盤をも含む多様性があるという意味で、多職種連携よりもさらに大きな影響を日本の介護に与えることになるだろう。

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 日本の介護のコアコンピタンスである共通基盤は、多文化協働によっていわば揺らぐことになる。しかし、この「揺らぎ」が、日本の介護が国際的な環境において位置を確立するための試金石となるだろう。外国人スタッフと協働してもケアの質が保たれたとすれば、日本の介護のコアコンピタンスは国際競争力あるいは国際的にも通用する普遍性を手に入れたことになる。
 共通基盤をどのようにマネジメントし、多様な思考スキームを共存させる手法を確立させるか。このマネジメントの確立が、日本の介護に国境を越えたフロンティアがあるのかどうかを左右する。日本の介護の特性である「多様性をハーモニーとして共存させる共通基盤」の探究を進め、文化圏を越えて応用可能なものにすることが重要である。

著者

神山 資将

神山資将 氏

一般社団法人知識環境研究会 代表理事

国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了(修士(知識科学))。独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 産学連携研究員、財団法人政策科学研究所研究員を経て現職。医療サービス科学の研究の一環として、思考スキームに基づいた多職種連携研修を実施中。


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