多職種連携でわかりあえるのか~チーム医療のコミュニケーション~

2016/09/26 神山 資将
by 神山資将

一般社団法人知識環境研究会 代表理事

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思考スキームでコミュニケーションする

筆者は異なる世界観・文化を持つ専門職間のコミュニケーション法を研究しています。

そのテーマの一つが、人の考え方を共通の枠組みに入れる方法についてです。その枠組みを「思考スキーム」と呼びます。思考スキームは「事実」「根拠」「行動」という三つから成り立ちます。事実とは自分が「何を見たか」ということ、行動は「見たこと(事実)に対してどのように働きかけるか」、根拠は「事実から行動を判断するための価値基準(理由)」です。

考え方や専門性が違う人が協働する際には、「根拠」をしっかりと共有することが大切です。例えば、同じ場面に看護師と理学療法士がいて、アクシデントに遭遇したとします。彼らの行動が同じであっても、同じ根拠から行動しているとは限りません。異なる根拠から行動している場合、ケアが進行する中で、両者の行き違いが目に見えるようになるでしょう。

思考スキーム

思考スキームは各専門家集団の世界観・文化のあり様の一端なのです。日常、私たちが業務上であれ、他者とコミュニケーションするとき、根拠まで説明することは少ないでしょう。

プライベートな付き合いであれば、「以心伝心」で済むことかもしれません。しかし、多職種連携のように明確に異なる専門性を持っている者同士が協働する場合には、「自分は何を見て(事実)、どう考え(根拠)、行動する」という、いわば多職種連携の「構文」に従ってコミュニケーションすることが望ましいわけです。

筆者は、思考スキームに基づいたコミュニケーション・トレーニングを、医療福祉職を対象に行ってきました。実務者対象の実験から筆者が得た知見は、以下のようなものです。

・思考スキームに影響を与えるのは、職種ばかりではない(教育、年齢、性別なども影響する)
・連携するメンバーが異なると、同じ人間でも異なる思考スキームを持つことがある
・思考スキームは動的に変化する(固定的なものではない)

思考スキームに基づいて多職種連携を分析すると、実は職種の壁ばかりではなく、様々な壁を超える必要があることがわかります。それらの壁を、かつては飲みニケーションで超えていたのかもしれません。ドライなコミュニケーション環境にある今日、飲みニケーションと同じ効果を現場で簡単に実現する方法として、思考スキームが役立つことを願っています。

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著者

神山 資将

神山資将 氏

一般社団法人知識環境研究会 代表理事

国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了(修士(知識科学))。独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 産学連携研究員、財団法人政策科学研究所研究員を経て現職。医療サービス科学の研究の一環として、思考スキームに基づいた多職種連携研修を実施中。


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