コラム

健康意識の高まる妊娠・出産期がカギ~Well-beingビジネス発展の突破口~

2016/09/29 木下 輝彦
by 木下輝彦

日本総合研究所 執行役員 総合研究部門長代行

田川 絢子
by 田川絢子

日本総合研究所 総合研究部門 ヘルスケアイノベーショングループ マネジャー

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経済性に見る予防医学

潜在的健康関心層の3割強を占める「さまざまな情報を入手しては試すが続かない層」は健康に対する投資意欲があり、他人への波及効果が強い。

保険「外」サービスの産業創出が必要

増え続ける社会保障費を抑制しつつ、国民の健康寿命の延伸を図るために、保険外サービスの充実が求められるようになった。

今のところ未発達な保険外サービスを社会インフラとして機能させるには、多くの企業が参入し、競争によって各サービスのレベルが高まることが不可欠だ。現在、フィットネスサービス程度しか確立していない関連サービスの産業化は急務といえる。2014年改訂の日本再興戦略の中でも、保険外サービスを含む健康寿命延伸産業の創出が明示され、関連産業の市場規模を2020年に10兆円(現状4兆円)まで拡大する目標が掲げられた。

特に、公的医療費の抑制は世界的なメガトレンドであり、健康寿命延伸産業は中長期的な成長が見込まれる。既に、医療分野をはじめ、アップルやグーグルなどまで多種多様な企業が進出を検討・開始している。

健康増進・予防ビジネスは性質が異なる2つのビジネスから構成

健康増進・予防は、どのような状態の消費者を対象とするかにより2つのビジネスに分かれる。(図表1 健康増進・予防ビジネスの分類)

Well-beingビジネス発展の突破口
図表1.健康増進・予防ビジネスの分類 出所:日本総研作成

図表1.健康増進・予防ビジネスの分類 出所:日本総研作成

1つ目は、疾病を発症した“後”の継続通院患者に対する重症化予防である。これは、症状が進行することにより発生する医療費を抑制するビジネスである。生活習慣病に代表される慢性疾患の罹患者は、日本で約3,000万人程度存在すると推計される。彼らは、自らの健康状態に危機感を保有しており、介入することで行動変容が生まれやすい対象といえる。また関連プレーヤーや、“疾病”起点である点は従来の医療ビジネスに極めて近い。つまり、重症化予防は開業医、及び、コ・メディカルの方々の果たす役割が大きい。まさに日々の生活習慣の把握を通じた指導や、服薬コンプライアンス指導などを通じて重症化を予防することが重要だ。

一方、約7,000万人程度存在する健康・未病状態の人に向けた健康増進ビジネスは、差し迫った危機感のない対象者の自覚や目標、意識によりアウトカム(期待値に対する結果)が異なる。そのため、この領域のビジネスは、医療の近くに位置しながら、対象者の習慣や嗜好に大きく左右される要素が強い。

健康への感度が低い差し迫った危機感を持たない健常者にとって、健康増進商材・サービスは合理的に計画的に購入したいものではない。できれば購入したくないという否定的な位置づけから積極的に購入したいという認識変容の実現が重要となる。

つまり、Well-beingビジネスは消費者の意識啓蒙から着手し、ムーブメントを形成することが必要だ。

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著者

木下 輝彦

木下輝彦 氏

日本総合研究所 執行役員 総合研究部門長代行


田川 絢子

田川絢子 氏

日本総合研究所 総合研究部門 ヘルスケアイノベーショングループ マネジャー


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