健康意識の高まる妊娠・出産期がカギ~Well-beingビジネス発展の突破口~

2016/09/29
by 木下輝彦

日本総合研究所 執行役員 総合研究部門長代行

by 田川絢子

日本総合研究所 総合研究部門 ヘルスケアイノベーショングループ マネジャー

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健康に対する消費者意識は大きく3つ

消費者である健康・未病状態の人の健康意識を大きく「健康へ積極的に投資している層」「潜在的健康関心層」「健康無関心層」の3つに分けて考えると、このうち健康へ積極的に投資している層と無関心層は新たなサービスの対象とはなりにくいことが分かる。いわゆる健康オタクの前者は既に自らが必要と考える商品・サービスを購買しており、これ以上支出を増加させることは難しい。健康に全く関心のない後者は、どんな商品にも反応しない。

つまり、Well-beingビジネスの成否を握るのは、全体の70%を占める、潜在的健康関心層だ。特にこの中の3割強を占める「さまざまな情報を入手しては試すが続かない層」は健康に対する投資意欲があり、他人への波及効果が強いという特徴を持ち、高いビジネス性が見込める。

妊娠・出産期の女性の波及力と長期的な商機に期待

この層の7割を構成する「女性」こそが、最初に着目すべき有力な消費者と言える。女性に対し、アプローチすべきタイミングは、著しい体調変化のほか、新たな家族への健康意識も高まる妊娠・出産の時期が最良と考えられる。6歳までの子を持つ女性は約550万人と推計され、母数としては多くないが、ママ友など周囲への波及の強さや、若年層が多いことから長期的な商機が見込める。さらに、子を持つ女性への手厚いケアは女性の社会的活躍にも貢献する点から意義も大きい。

一方、そうした女性の悩みは、産後特有の抜け毛やストレス、腰痛をはじめ、体力の衰えや頭痛といった不定愁訴、そして見た目にかかわる肌・体への不満など多岐にわたる。こうした悩みの解決には、スキンケアから健康食品、サプリメント、睡眠といった多様な商品・サービスから最適なものを抽出し、提供、効果の計測・可視化をワンストップで行うことが求められる。

つまり、彼女たち向けの商品・サービスは、単一企業だけでは提供しきれない。前述のアップルやグーグルが進出してきたのも、顧客情報の収集・蓄積・分析を行うICT企業が基盤となり、健康美容商品・サービス事業者群や流通機能などが集積するモデルがWell-beingビジネスの主流になると見込むからだ。こうしたモデルは、いずれ子を持つ女性だけでなく、悩みを抱えるあらゆる消費者を対象としたモデルに進化するはずだ。まずは健康への意識が高まる妊娠・出産期の女性を入り口として、長期的に連携する企業連合の構築が必要といえる。

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著者

木下輝彦 氏

日本総合研究所 執行役員 総合研究部門長代行


田川絢子 氏

日本総合研究所 総合研究部門 ヘルスケアイノベーショングループ マネジャー


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