“納得して生き、死ぬ人生”を支える仕組みづくり

2018/03/23
by 編集部

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「AIを活用すれば、機械が人間を代替していくことが増えていくでしょう。しかし、AIが高い精度で診断したり、治療方針を決めたりしても、“AIが言っています”だけでは患者さんは納得しません。AI技術のキモは“どんなデータを学習させるか”と“出てきた判断をどう伝えるか”です。長く診てくれている医師が自分の言葉で結果を伝えるから納得感が得られるし、その治療を信頼し励もうとも思うのです。患者さんに納得感・信頼感を与えることはこれからも医師の技、アートであり、医療の質を保つことにもつながるはずです」。

原 聖吾氏

オンライン診療アプリ「curon」へのAI実装はまだ実験段階だというが、AI技術自体は十分な量と質のデータをインプットすれば適切な決定ができるところまで洗練されてきているという

誰もが納得感をもって生き方を選ぶ社会に

医療の仕組みを変えたいという信念のもと、キャリアを積んできた原氏。「もともと新しいことに挑戦するのが好き。この性格のおかげで、立ち位置を変えながら医療に携わることができ、見方に広がりが出た」と振り返る。そして現在は、「オンライン診療という新しいかたちの医療を作り出すことに、面白さと難しさを感じている」という。
「医師にとっても患者にとっても未知の領域を扱っているため、まだ決まったかたちがありません。医師、患者、それぞれが本当に求めるものとは何だろうと模索しながら進んでいくのは面白いです。一方で制度や制約が定まっていないことが多く、どうすべきかと難しさを感じることも起こります。ただ、私たちが一部の制度を形作っている側面も感じられることが、大きなやりがいになっています」。
原氏の事業のコアである“医療の情報化”は医師の介入段階をも変える可能性がある。医療の世界では治療に重きが置かれがちだが、オンライン診療が普及し、AIでの診断・予測が可能になれば、医師はより早い予防の段階から介入できるようになる。
「大切なのは、患者さん本人が納得感を持って生き、死んでいくことです。治療が必要になってから病院に来て病名を聞かされ、こうなるならあんな生き方はしなかったのに…と後悔する人を減らせるのではないか。自分の行動や環境が、結果としてどんな健康状態や疾患につながるのかを理解し納得したうえで意思決定ができる社会をつくっていきたいのです」。

原 聖吾氏

現在は経営に集中し、自身が診療を行うことはないが、かつての同僚や現在の顧客など、多くの医師と接して現場のニーズ、感覚を吸い上げているという原氏。一方で、「また臨床の場に立ってみたいという気持ちもある」と話す

データの蓄積と分析が、医療のあり方を変える

これを実現するには、疾患のデータだけでなく、その手前、つまり健康や予防に関するデータが欠かせない。「疾患の手前」に関するデータも、多くはないが蓄積が進んでいる。しかし、そのデータと医療データが断絶していることが今の課題だ。原氏は、「データの断絶を埋め、つなげられたデータを分析することが必要。私たちの取り組みで課題を乗り越えていきたい」と語る。また、「予防医療を進めるには、保険制度の仕組みや人々の価値観の変化も必要」だと指摘する。
最後に、今後会社が目指すビジョンを聞いた。
「組織として広がりがあるチームをつくりながら、人の医療に関する情報をどこよりも理解し、そこから価値を生み出せるような存在になりたい」。
医療の情報化を目指して原氏が進む道の先には、新たな医療の世界が広がっていくだろう。

原 聖吾氏

創業時に比べ、社員数もかなり増えた。創業当時はロジカル思考の「似た者同士」が多かった同社だが、今は多様なタイプの社員をメンバーに加え、組織の幅を広げていきたいと原氏は語る

株式会社情報医療

代表取締役 CEO 原 聖吾
2015年11月設立
事業内容:情報収集、情報処理、情報提供に関するサービス、医療情報システムの企画・開発・販売 ほか

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