コミュニケーションの原点は「双方向」 ー“不確実”な医療情報を、われわれはどう理解し、共有すべきか

2020/02/21 編集部
by 編集部

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医療現場では、とかく“伝わらない”ことが課題となる。 その原因は、医療者と患者の間においては専門知識の差、医師や看護師といった多職種の間においてはひとつの事象を捉える思考フレームの違いであると言われたりする。医療や健康にかかわる情報を、私たちはいかに理解し、伝えればよいのか。「ヘルスコミュニケーション」の研究に携わる中山健夫氏に伺った。

お話・中山健夫氏(京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学)

医療情報が広がる3つの次元

公衆衛生、疫学を専門とする中山氏が研究しているのは、研究成果が臨床へ活用され、患者がよくなり、地域がよくなり、最終的に社会全体が健康になるためのコミュニケーションのあり方だ。

「よい情報が得られても、研究者のところに留まっているのでは意味がありません。情報を広げていくコミュニケーションは、患者・地域・社会をよくする方策のひとつです」と話す。

情報が伝わる範囲にはミクロ、メゾ、マクロの3つの次元があるという。ミクロは対人レベル、マクロは社会レベル。マスメディアやがん患者・家族の声を受けて成立した「がん対策基本法」はマクロレベルにあたる。そして中間のメゾレベルは、ある程度顔が見える限られた範囲を指し、地域や組織が当てはまる(図1)。その“メゾ”にあたる病院広報が最近やっと盛り上がってきたと感じているという。

「患者さんが病院広報に触れることでその病院が地域で果たしている役割を知り、病院を選ぶ手がかりにできます。ミクロとマクロ、それらをつなぐ要になるメゾ、すべてが揃って安全性と信頼性の高い医療情報になります」。

“不確実性”を孕むエビデンス

現代では社会のあらゆるところに医療・健康情報が溢れているが、医学研究によってつくられるエビデンスと巷の健康に関する情報が異なるものであることは、医療関係者であれば皆実感しているだろう。

「動物実験でわかったことが、そのままヒトに当てはまるかといえば、そうはいきません。実験動物は遺伝的に制御され、均質な性質を持っているし、実験環境では生活リズムや食事もコントロールされています。多様なライフスタイルを持つ人間とは、まったく異なる生き方をしているのです。もちろん、医学研究により疾患の機序が明らかになったり、何らかの傾向がわかることは非常に重要な成果です。しかし、それは絶対ヒトに適用できるかというと、そうではない。薬であれば効く人・効かない人がいる、時に副作用が出るのも避けられないということが十分に伝えられていません」。

医学研究により得られたエビデンスは、一定の不確実性を孕んでいる。しかし、“わかりやすく”加工された健康情報を受け取る側の多くは、医学研究の成果に不確実性があるとは考えないことが多い。

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