インタビュー

語り合いが生む「信頼」の医療

2016/09/29 編集部
by 編集部

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患者さんから話を聞くということは非常に主観的な情報。 本当に重症であっても我慢強い方は、なかなか痛みを言いません。

患者さんにとっては、気軽に話を聞いて、問いかけて、説明してくれる医者が望まれている。患者とよい関係をつくれる医師は、「受容」「共感」「臨床能力」があると奈良氏は語る。そこで重視されているのは、相手への理解を前提とした「信頼」だ。どうすればそのような関係が築けるのだろうか。

患者の話は「引き出す作業」が必要

日本では医療体制が整ってから数十年が経つが、最近は病院にかかるシニア層の患者が増えており、そこでは前にも増して効率のよい診療が求められている。いかにして患者は自分に合う医師を選び、医師とスムーズなコミュニケーション関係を構築するのか。そこでは医師の側にも患者に近づく努力が求められている。

『ホームドクターを探せ!』『地獄の沙汰も医者しだい』の著書があり、かかりつけ医制度を推奨する、順天堂大学医学教育研究室特任教授の奈良信雄氏に、医療におけるコミュニケーションについて話をうかがった。

奈良信雄氏 順天堂大学 医学教育研究室 特任教授 医学博士。1975年東京医科歯科大学医学部卒。94年東京医科歯科大学医学部教授(臨床検査医学)。99年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授(全人的医療開発学講座臨床検査医学分野)。02年東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター教授兼任。06年同センター長。15年順天堂大学特任教授。東京医科歯科大学特命教授。

奈良信雄氏  順天堂大学 医学教育研究室 特任教授
医学博士。1975年東京医科歯科大学医学部卒。94年東京医科歯科大学医学部教授(臨床検査医学)。99年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授(全人的医療開発学講座臨床検査医学分野)。02年東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター教授兼任。06年同センター長。15年順天堂大学特任教授。東京医科歯科大学特命教授。

そもそも医療行為の流れは、医師が患者の困っていることを把握し、それに基づいて診察し、視診、触診、打診、聴診などを行う。それだけでは不十分な場合には検査を行い、診断を確実にして、あとは治療し、経過をみる。

奈良氏は、患者から必要な情報を引き出すためには、コミュニケーションが重要と語る。医師は患者がどういうことを心配しているのか、訴えているのかを十分に聞き出すことが求められる。昔で言う「問診」、現代では「医療面接」だ。

「ここで最初にしなければならないのは、患者さんの話を聞くこと。ただし、患者さんから話を聞くということは非常に主観的な情報ともいえます。例えば本当に重症な方でも我慢強い方は、なかなか痛みを言ってくれないこともあります。つまり客観性に乏しいため、私たちは患者から正確な情報を引き出すためにコミュニケーションを重視するのです」

奈良氏は心筋梗塞の例を上げる。この病気は悪くすれば死に至る重病だ が、お年寄りは「なんとなく胸が気持ち悪い」「何か普段と違う」といったレベルで語ることも多いという。その一方で、心臓神経症は客観的にはあまり重篤とはいえないが、神経過敏な人は「今にも死ぬのじゃないか」と訴えたりするという。それほどに患者の主観はあやふやであり、そのまま信じるわけにはいかない。

よい医者は「話しやすく」「説明上手で」「よく聴く人」

それでは、患者はどんな医師を「よい医師」と考えているのだろうか。厚生労働省では患者満足度調査を行っており、受けた医療に対してどのような点にどの程度満足できたかという患者の印象を調べている。

「良い医師のイメージ」を聞いた質問で上位にある選択肢は、「話がしやすい雰囲気がある」「病気や治療について十分な説明をしてくれる」「患者の症状をよく聴いてくれる」で、どれも約7割の人が選んでいた。逆に支持が少ないのは「専門医の資格を取得している」「医学博士の資格を取得している」「有名な大学医学部の出身である」といった医師のプロフィールに関わるものだった。いかに医師との親密なコミュニケーションが望まれているかがわかる内容だ。

「それほど患者さんにとっては、気軽に話を聞いて、問いかけて、説明してくれる医者が望まれているということです。客観的な情報を適切に得るには、医者と患者が対等になって、何でも話してもらうことが必要。患者さんによっては、勝手に事実にフィルターをかけて、「これは大したことない」とすべてを言わないこともあります。そこを越えて、とにかくいろんな情報を出してもらうことが大切なのです」

奈良氏は、患者に話をさせたいときには「開かれた質問」をするという。「どうなさいましたか」「どのように具合が悪いのですか」「どういうことが心配なのですか」と、患者が自分の言葉で表現しやすいような質問をするのだ。このような質問では、患者が持つ疑問や信念など、ぼんやりと価値を置いているような部分についても、話してもらえることが多くなるという。どんな情報でも判断には必要なものであり、それを選択するのは医師だ。互いに情報を出し合えば、判断は早く正確になる。

また、患者の診療では、家族を含めた周辺の人たちから、さまざまな要望が来ることもある。そのため、患者が入院したときなどには患者と家族にしっかりと説明し、理解を得ておくことが大事だと語る。

「そこではキーパーソンを見つけることが、その後の診療をスムーズに行うためにも重要になります」

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