コラム

提言:患者・医師・国・社会、“四方よし”のオンライン診療のために

2018/07/17 編集部
by 編集部

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提言:患者・医師・国・社会、“四方よし”のオンライン診療のために

2015年の通知改正によりサービスのローンチが相次いだ「オンライン診療(遠隔診療)」。医療の場の広がり、医師の働き方の多様化、新たな医療ニーズの創出などが期待されるが、2018年3月に厚生労働省から発表された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」と診療報酬加算により、国からひとまずのかたちが示されたといえる。現場的にも制度的にも試行錯誤段階にあるオンライン診療のあるベき姿とは。臨床・アカデミア・ビジネスという3つのバックグラウンドを持つ医師の原正彦氏に伺った。
『Medical Communication』2018年夏号より転載)

原 正彦氏(Masahiko Hara)

原 正彦氏(Masahiko Hara)

2005年島根大学医学部卒業。神戸赤十字病院(初期研修)、大阪労災病院(後期研修)での研修後、大阪大学大学院医学系研究科にて学位取得。大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部(特任研究員)を経て、日本臨床研究学会 代表理事、島根大学地域包括ケア教育研究センター 客員准教授。多数のヘルスケアビジネス開発に携わり、mediVRやリサーチマインドの代表取締役を務める。日本循環器学会 循環器内科専門医、日本内科学会 認定内科医。

「オンライン診療」のそもそものメリットとは

技術革新や2018年度診療報酬での項目新設などで注目が集まるオンライン診療。そもそものオンライン診療のメリットについて、日本臨床研究学会 代表理事の原正彦氏は「時間と場所にしばられないこと」だと話す。
企業では年に1回の健康診断が義務づけられているが、50歳を超えると半数ほどは何らかの異常があり、4分の1は生活習慣病が指摘されるという。しかし、仕事で時間が取りにくいことを理由に、受診しない人は多い。そういった人たちに対して、オンライン診療は病院を受診するハードルを大きく下げることができる。
「生活習慣病の悪化により働き盛りの年代の人が大きな病気になると、家族は介護をしなければならず、また会社は働き手を失ってしまいます。早期からの介入・治療ができないことは個人の問題だけでなく、社会の問題でもあるのです」。
高血圧や脂質異常症などの生活習慣病は、継続的な服薬で病状が安定する患者がほとんどだ。そのため、わずか5分の診療で薬を処方してもらうためだけに半日かけて通院することになる。こういった人たちにとっては、受診の手間が治療中断の原因となるリスクが高い。
「軽症の生活習慣病患者を対象として空き時間に、スマートフォンでさっと自身の状態を入力する。医師が確認して問題がなければ薬が届き、年に1回程度必要な検査をしっかり実施する。そのようなかたちがオンライン診療のあるベき姿なのではと思っています」。
3月に発表された指針では、3カ月に1回対面診療を行うことがオンライン診療を行ううえでの絶対条件となっている。だが、安定した生活習慣病患者はすでに90日処方で3カ月に1回の対面診療が行われており、最もオンライン診療に適した患者が恩恵を受けられない状況になっている。
「今回の指針は、初めてオンライン診療のあり方についてかなり踏み込んだ言及をしたものなので、慎重を期したのでしょう。しかし、この内容では適応となる患者さんが少なく、オンライン診療のメリットが十分に活かせないということも確かです」。

オンライン診療の制度確立に必要なエビデンス

現在の医療制度のなかで、オンライン診療をより効率的に運用するためには、エビデンスを示すことが重要だ。そのひとつとして、まずはオンライン診療と対面診療とでどのくらい効果が違うのかを示さなくてはならない。
「オンライン診療が対面診療に比ベて半分ほどの効果しかなくても、それはそれでいいと考えています。そのデータを素直に解釈して、次にそれを7割にするにはどうすベきかを考えればいいのです」。
これまで健診で異常を指摘されても受診していなかった人たちは、そもそも医療につながっていなかった。そのことを考えれば、必ずしも対面診療と同じ効果が得られずとも、まずはもっと気軽に医療を受けられる機会を提供することが必要だという。
また、今回の指針では診療行為をリアルタイムで行われなければならないという規定も設けられたが、「5分診察で顔を見て少し話す程度の情報であればテキストやメッセージ動画のやり取りでも十分取得可能と考える医師もいる。この部分に関しても一律に禁止するのではなく、患者満足度や治療継続率、利便性等のリスクベネフィットのバランスを考えられる余地を残すベきです。今後はオンライン診療を行っている医師のなかで、テキストチャットでも判断に差しさわりがないと感じた人の割合などもデータで示していく必要がある」と原氏は語る。

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