コラム

多職種連携でわかりあえるのか~チーム医療のコミュニケーション~

2016/09/26 神山 資将
by 神山資将

一般社団法人知識環境研究会 代表理事

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連携の前に、互いの世界観・文化を知ることからはじめる

多職種連携、医療安全や患者満足、国際化など、医療を取り巻く変化は著しいものがあります。これらのキーとなるのは「人間の思考」です。ここでは多職種連携によるチーム医療のパフォーマンスを高めるためのコミュニケーションについて、「思考スキーム」という観点から述べたいと思います。

「職種」で異なる世界観

医療の高度化と専門化が進む一方で、希薄になっているものは何でしょうか。それは医療スタッフ間の関係性です。

「飲みニケーション」や「同じ釜の飯」という表現があったように、かつては職場にウェットなコミュニケーションがありました。これらは勤務時間外に多くの時間が必要ですし、同じ職場に同じメンバーが長年勤務することが前提です。

医療現場に特有のことではないかもしれませんが、仕事と生活の両立が叫ばれ、人材の流動性が高くなった今日の職場では、ウェットなコミュニケーションがとりにくくなっています。ドライなコミュニケーションで組織を維持し、運営していくためには相応のコミュニケーション・マネジメントが必要とされているのです。

スタッフ間のつながりが希薄になる背景には、専門化・医療のモジュール化があります。高度に発展した現代社会は、様々な専門家集団によって支えられています。専門家集団はそれぞれの専門性を追求する傾向にあります。専門家集団が持っている固有の世界観・文化は、構成員であるスタッフ一人一人にも受け継がれます。

医療現場は、専門家集団が結集した場の際たるものです。医療福祉分野の職能団体の倫理綱領には「他職種の尊重と連携」という項目があります。連携は重要ですが、別の見方をすれば、「倫理綱領で定めなければならないほど、自然に任せておけば専門職集団のモチベーションは自らの専門性の追求に向かう」ということです。専門性の追求が進むほど、職種間にはコミュニケーションギャップが生じやすくなります。だからこそ、意識してコミュニケーションをマネジメントする必要があるのです。

筆者は、異なる職種が互いにわかりあうということは難しいと考えています。そもそも専門家集団は、他の集団が持つ世界観・文化と共感・同調することが難しく、自然に任せておけば互いに排除しあいます。互いにわかりあえないことを前提に、コミュニケーションを工夫し、業務を確実にし、新しい価値を創造していくためにはどうしたらよいかを探るのが現実的です。

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著者

神山 資将

神山資将 氏

一般社団法人知識環境研究会 代表理事

国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了(修士(知識科学))。独立行政法人産業技術総合研究所産学連携研究員、財団法人政策科学研究所研究員を経て現職。医療サービス科学の研究の一環として、思考スキームに基づいた多職種連携研修を実施中。


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